『客たち』は、実際の事件を基にしてかかれたドラマです。
○事件の概要
事件は、政府総合庁舎を中心に開発されたマンションが建ち並び、比較的豊かで安全とされている都市の一つ、果川で起きた。
死後、2、3日と見られるバラバラの遺体が、ゴミ置き場で発見された
被害者は、退役海軍将校60歳の父親と50歳の母親。
被疑者は、次男、イ・ウンソク、24歳。
ソウルの名門私立大学を徴兵で休学、部隊除隊後もまだ復学していなかった。
遺体発見時、両親の所在についての問いかけに、「先週の日曜日に二人で教会に行ったきり、連絡がない」と答え、「なぜすぐ失踪届を出さなかった?」との質問には、落ちついた声で「ソウルに住んでいる兄に連絡して申告するつもりだった」と答えた。「遺体で発見された」と刑事が告げると、驚いた表情をしてうなだれた。
しかし、居間とシャワー室で両親の血痕が発見され、自白。
金槌で殺害し、死体をシャワー室に移して、包丁とノコギリで切断し、ビニール袋に分けて、ゴミ置き場に捨てた。夫婦の頭部は、政府総合庁舎横で、父親の下肢は競馬場の横、胴体は遠く離れたソウル中区の廃棄物処理場で発見された。
○事件の背景
父親は、苦労をしながらも海軍士官学校に入学したエリート将校。
母親は、早くに亡くなった父親の遺産で裕福に育ち、名門女子大の政治学科を卒業した才女。
軍事政権時代に二人は出会い、結婚。“権力の夢“を叶えたかった母親と、常に自分の欲求を抑えて任務遂行に専念してきた父親。夫婦仲は悪く、冷たい家庭で育った二人の息子。長男は反抗するなど、直接的な意思表示をしていたが、弟は心に押し込め耐えていた。
やがて父親が大佐昇級に失敗すると、母親の欲求不満や挫折、怒りは爆発し、夫ではなく、次男に向けられることが多くなった。クラスでも常に3番以内に入る秀才だったが、「そんなことでソウル大学に入れるのか?」「お前のような足りない人間はいらない。死ね」「負け犬」など暴言を浴びせる。名門の私立大学に合格したが、ソウル大学ではないという理由で“失敗した奴”として扱った。たまにしか家に帰らない父親も、慰めるどころか、軍隊式の叱責と恐怖感を植え付けた。また、学校でも、軍隊でも、同級生たちに比べ体も小さく、友達もなく、いじめと暴力の犠牲となった。精神障害と言えるほどのひどい鬱状態であった。
事件を知った兄は「弟の気持ちがわかる。全て自分のせいだ。弟と一緒に罪を償います」と自分を責めた。
一審では死刑を宣告されるが、二審で無期懲役となり、現在も服役中である。*****
日本でも1980年に「金属バット両親殺人事件」がありました。エリート一家の両親をバットで殴り殺したというセンセーショナルな事件は、当時とても話題になり、山崎哲さんが「子供の領分」という作品を書かれました。
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