そして、またもややってまいりました、Rehearsal hall Diary!
第8回目の今日はこの方!
元「虚構の劇団」、で今は…、あっ、この後はご本人から後ほど!
何と!前回のあの工藤孝生さんと同郷だそうです!
…でも、特にいい匂いはしないです。
本日のブログ担当は、ぽこぽこクラブという演劇ユニットを主宰している、わたくし三上陽永です。よろしくお願いします!
流山児★事務所に客演するのは、去年の「夢・桃中軒牛右衛門の」に引き続き2本目。
つい先日、演出として関わった新進演劇人育成公演 「血は立ったまま眠っている」(流山児さんがプロデューサー)が終演したばかりで、またspace早稲田に帰って来た感覚。
ここ2年ぐらいで、流山児★事務所と急接近している今日この頃。
「こんなにウチばっかと関わって、ぽこぽこクラブは大丈夫なの?」
と、劇団員の方に心配される始末である。確かに…でも個人的には楽しい。
今回の作品は詩森ろばさん作・演出。同じ流山児★事務所作品でありながら、当然のことながら作・演出が変わると、またガラッと色が変わり…新鮮な気持ちで稽古に臨めてしまう…成る程、流山児★事務所を長年続けている劇団員の方々がいる事にも納得。
私は「キムンウタリOKINAWA1945」のみに出演する。役どころはアイヌ兵士である。
「え?沖縄の話で、アイヌ兵士?アイヌって…北海道の方じゃないの?」
と思われるかもしれない。私もそうであった。
でもここに、本作と、無謀とも言える2作品同時上演+上映会という大規模プロジェクトの醍醐味がある。
北海道と沖縄…北と南を繋げるものは様々あるが、本作では特に「差別の歴史」にスポットをあてている。
本作に臨むにあたり、沖縄戦についても様々な本を読んだのだが…
一番衝撃的だったのは、アメリカが日本への上陸作戦を敢行する際、日本における沖縄への差別意識を十分理解した上での作戦だったことである。
つまり、沖縄なら多少破壊しても本土の日本人は大丈夫であると。軍事力を見せつけるなら、沖縄がちょうどいいと思われていた。まさにその狙いは的中する…
日本人自身も気づかない(フリをしていただけかもしれないが)程の根深い差別意識を逆手にとって、日本という国を切り崩したのだ。
そしてその沖縄戦の中でも、様々な差別があった。そこにはアイヌ兵士も関わってくるのだが…
一見平和に見える日本。
実際、私が生まれ育った環境で、貧富の差は感じる事があっても、土地や血で相手を差別するという場面には遭遇してこなかった。青森出身の私としては、上京した時に津軽弁を標準語に直すのに苦労したが…と、ここまで書いて、ヒヤッとした。
津軽弁を標準語に直す事は当たり前だし、訛りのある自分は当然しなければいけない事だと思っていたのだが、果たしてそうだったのだろうか…
というふうに、本作に関わる事で既に意識が変化している。この作品は、そんな作品なのだ。
無意識のうちに考えないように、見ないようにしてきた何かを意識させる。気づかせる。考えさせる。でも決して道徳の授業や歴史の授業ではなく、あくまで演劇として、時にはエンターテイメントとして。
一口に面白い作品であるとは言い難いし、言いたくない。
ただ、心の底から見てもらいたい作品ではある。それは、この作品を観客達がどのように観劇し、終演後何を感じるのか、登場人物を演じる一役者として、物凄く興味があるのだ。
話を戻すが、私は今回アイヌ兵士役である。
沖縄戦の話で、アイヌを演じるのだ。
先日、アイヌ料理専門店「ハルコロ」(新大久保にある)に詩森さんと、同じくアイヌ兵士を演じる浅倉さん、流山児★事務所では勝手に姉貴!と思っている弘子さんと食事に行って来た。
詩森さんが以前「コタン虐殺」という作品を創作するにあたり、取材をしたお店である。
ハルコロのアイヌ料理はめちゃくちゃ美味しかった。珍しいものでは鮭の心臓があったが、これもまた美味である。
アイヌの血を受け継いだご家族が経営されているお店。近年大ヒットした漫画「ゴールデンカムイ」の影響もあるのか、お店は大繁盛。お客さんは若い方も多い。
ハルコロは、お洒落で少し変わった食材を出す、美味しいお店である。
「アイヌの差別の歴史について、ちょっと聞いてもいいですか?」
とは、どうしても言えなかった。
たぶん、これが今の日本なのだ。
今幸せで、楽しくて、差別なんか感じてないんだからいいじゃん!
っていう自分がどこかにいる。わざわざ掘り起こさなくても…
でもそこに、詩森さんは切り込んでいく。
ハルコロでの楽しい夜を過ごしながら、私の頭の中は、グルグル回って…結局、アイヌ兵士について何の話もできなかった。
帰り際、手作りのマスクが目に留まり、それを購入した。アイヌ伝統の模様が刺繍されたマスク。このマスクを購入する事が、私の唯一できた「私は、アイヌに興味があります。」の意思表示だった。しかも帰り際。情けない。
稽古も中盤であるが、いまだに私の頭の中はグルグルしていて、この作品にどう向き合えば良いかわかっていない。
ただ粘り強く、向かい続けようと思う。
考え続けようと思う。