青森県のせむし男を演じます。
青森県青森市久須志の、三上陽永です。
寺山修司さんは、母校である青森高校の大先輩にあたります。
高校時代の私は、演劇にも、詩にも、もちろん寺山修司にもまったく興味がありませんでした。
ある日、たまたま寺山修司の本ばかりが並ぶ教室に迷い込みました。
何の作品だったのかは覚えていません。
けれど、生まれて初めて寺山修司の詩を読んだ時の感覚だけは、今でも忘れられません。
恐ろしかった。
ただ文字を読んでいるだけなのに、言葉が言霊になって耳元で囁いてくるような気がしたのです。
文字の並びまで異様に見えました。
呪いの書を開いてしまったような感覚でした。
その場にいた先生だったのか、司書の方だったのか、今では思い出せません。
にこにこと笑うその人は、本来は貸し出していない寺山修司全集を、「内緒ですよ」と貸してくれました。
私が寺山修司に興味を持ったことが、よほど嬉しかったのでしょう。
当時の青森高校は、まさに進学校。
周りは勉強、勉強。
寺山修司の話題など、ほとんど耳にしませんでした。
家へ帰り、続きを読もうとしました。
でも、怖い。
結局、本を閉じ、本棚の奥へしまい込んでしまいました。
その夜、夢を見ました。
弘前の観桜会にあった、お化け屋敷。
いや、見せ物小屋でした。
小人、蛇女、鎖につながれた身体の不自由な男。
幼い頃、父に手を引かれて入った、あの見せ物小屋。
あの光景が、夢の中で鮮明によみがえったのです。
家のすぐ外まで、奇怪な姿の魑魅魍魎たちが押し寄せてきている。
そんな妄想に囚われ、怖くて眠れない私の手を、隣で寝ていた父がそっと握ってくれました。
そんな、不思議な夢でした。
結局、全集はほとんど読めないまま。
返すきっかけも失い、十八歳で上京する時、その本も一緒に東京へ持って来ました。
そして、時は流れます。
ここ最近、流山児祥という、強烈な磁場を持った人と出会い、気が付けば寺山修司の世界へ、ずるずると引き寄せられていました。
寺山さんの処女戯曲『血は立ったまま眠っている』を演出し、
そして今回は、とうとう出演者として、『青森県のせむし男』に立つことになりました。
しかも、せむし男役です。
子どもの頃、恐ろしくて震えた見せ物小屋。
今度は、その見せ物になる側として舞台へ立ちます。
あの日、本棚の奥へ押し込めた寺山修司は、結局ずっと私を追いかけてきたのかもしれません。
ザムザ阿佐谷に現れる、寺山修司の見せ物小屋。
どうぞ、その覗き穴から、こちら側を覗きに来てください。
【文末質問コーナー】
Q.「寺山修司ってどんな人だと思いますか?」
少々お待ち下さい。
写真は「血は立ったまま眠っている」の舞台写真です